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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2984号 判決

控訴人

本富士産業株式会社

右代表者代表取締役

山田貞子

右訴訟代理人弁護士

河合怜

竹之内明

久木野利光

被控訴人

株式会社山茂商会

右代表者代表取締役

飯沼茂

右訴訟代理人弁護士

三川昭徳

主文

本件控訴を棄却する。

ただし、請求の減縮により原判決主文第一項中別紙第二物件目録記載(七)の物件の引渡を命ずる部分は効力を失つた。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

本件控訴を棄却する。

ただし、原判決主文第一項中別紙第二物件目録記載(七)の物件の引渡を命ずる部分にかかる訴えを取り下げる。

第二  当事者の主張

次のとおり附加・訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

一  控訴人

1  原判決三枚目裏二行目から同四枚目表三行目までを削除する。

2  (本件建物(一)の従物性)

(一) 民法八六条一項は、「土地及ビ其定著物ハ之ヲ不動産トス」と定めているところ、本件諸設備のうち地下タンク四基(以下「本件地下タンク」という。)は、鉄筋コンクリート造のタンク室及びタンク室中に固定された地下タンクより成り、地下に固定されているものであつて、これに附属する計量機等のみが地上にあり、その主要部分が地下にある点において通常の建物とはいささか様相を異にはするが、定着性・構築性・外気分断性・用途性を備えており、いわば倉庫の一種であつて、これを建物として観念することに何らの支障も存しない。このように本件地下タンクは、独立の不動産であつて、動産ではない。

(二) 控訴人は、本件建物(一)及び本件地下タンク等の本件諸設備を用いてガソリンスタンド営業を営んできたものであつて、かかる営業活動を構成するものとして本件建物(一)及び本件諸設備が存在していたことは明らかである。そして、本件建物(一)(販売室、オイルタンク、ポンプ室があるにすぎない。)がなくともガソリンスタンド営業は成り立つのに対し、本件地下タンク(石油類の貯蔵施設に給油施設であるキャノピー等が附加されて一体をなしている。)なしにはそもそもガソリンスタンドたりえない。かかる機能・用途上の主従関係からも、また価値的な主従関係からしても、本件地下タンクが本件建物(一)の従物とはいえないことは明らかであり、むしろ本件建物(一)が本件地下タンクの従物というべきである。また、本件諸設備のうち原判決別紙第二物件目録記載(一)、(六)、(一〇)ないし(三)は、いわゆる「備付物」であり、本件建物(一)及び本件地下タンクのいずれの従物でもない。同(八)、(九)はいずれも本件地下タンクの従物である。

(三) そうすると、本件競売は、本件建物(二)及び本件地下タンクの従物たる本件建物(一)のみを対象として行われたものであり、本件諸設備は競売の対象物件とはされていなかつたものというべきである。

3  (権利の濫用)

(一) 請求原因1記載の競売(以下「本件競売」という。)は、同項記載の根抵当権に基づくものであるところ、右根抵当権の設定者である訴外マルク石油は、昭和五一年四月二一日一回目の、同年一〇月二七日に二回目の不渡手形を出して、倒産した会社である。

このように、右根抵当権者である訴外中栄信用金庫は、訴外マルク石油倒産の事実を熟知し、昭和五一年一〇月二五日根抵当権設定契約、翌五二年一月二二日その旨の登記をすることによつて他の債権者を詐害することになることを知りながら、あえてかかる行為をし、更には、本件競売申立てに及んだものであり、被控訴人もまた、右経緯を熟知しながら本件建物(一)、(二)を競落したものである。

(二) 被控訴人は、その代表者飯沼茂の一人会社であるところ、同人と控訴人に対する本件建物(一)、(二)の賃貸人の地位にある訴外マルク石油とは実質上一体である。

被控訴人は、控訴人の本件建物(一)、(二)に対する賃借権を妨害し、これを対抗しえないものとし、訴外マルク石油その他の名義でガソリンスタンド営業を営むため、訴外中栄信用金庫には他に実行容易な物的、人的担保があるにもかかわらず、同金庫をして本件競売実行を敢行させ、控訴人の競落を妨害し、自ら競落人となつたものである。被控訴人名義による右競落は、まさに控訴人の賃借権を排除することを唯一の目的とするものであり、控訴人に対する関係では、右競落は訴外マルク石油によるものと評価されるべきである。

(三) 本件建物(一)、(二)を控訴人に賃貸するに際し、訴外マルク石油の代表者であつた訴外櫛田達義は、同訴外会社の旧債務については、同人において責任をもつて整理し、右各建物に対する抵当権も消滅させることを約していた。

(四) 被控訴人代表者飯沼は、いわゆる整理屋であつて、訴外須藤清とともに、訴外櫛田及びいわゆる櫛田グループ各社の倒産後の整理を、同各社の債務の保証人グループの依頼により費用及び報酬を得て行つてきたものであるところ、右整理の一環として、控訴人代表者山田貞子が所有権又は抵当権・賃借権を有する二棟の建物を、一棟は昭和五五年八月ころ、他の一棟は昭和五六年一月ころ訴外櫛田及び同須藤と共謀の上取り壊し、その敷地を他に売却するなどして、控訴人代表者を葬り去ることを企て、利益をあげてきたものである。本件建物(一)、(二)の競落も、かかる倒産後整理の一環であり、右同様の目的でなされたものであつて、被控訴人は、控訴人による本件各建物賃借の事実及経過、更には右(三)の約旨もすべて承知していたものである。

(五) 本件建物(一)、(二)の競落代金は、右(四)記載の二棟の建物のうち、控訴人代表者所有の昭和五六年一月ころ取り壊した建物の敷地(更地)を訴外櫛田から被控訴人において買い受けたこととし、その旨の登記を経た上、これを国に転売して得た金銭があてられている。右転売代金八七九〇万余円のうち、借地権価格相当分については、控訴人代表者が本来ならば国から取得すべきものであつて、その金額は本件競落代金一九四〇万七〇〇〇円を下ることはない。すなわち、競落したのは確かに被控訴人となつているが、その競落代金は、被控訴人が国から取得した金員のうち、控訴人代表者に支払うべき金銭から支弁されているのである。

(六) 以上のような事実関係のもとで、被控訴人が控訴人に対し本件建物(一)、(二)の明渡しを求めることは、権利の濫用として許されない。

4  被控訴人の後記主張4の物品買受けの事実は否認する。

仮に右買受けの事実があつたとしても、訴外山田貞子、同山田秀臣は、昭和五二年九月二〇日訴外マルク石油から右物品を含む本件諸設備を金一五〇万円で買い受け、右同日引渡を受けて対抗要件を具備し、控訴人は右同日右両名からこれを借受けて現に占有している。

なお、右訴外人両名の買受けの事実は、本件諸設備が本件建物(一)の従物ではなく独立の権利の客体であること及び本訴請求が権利の濫用に該当することの重要な間接事実ないし事情としても主張する。

二  被控訴人

1  原判決別紙第二物件目録記載(七)を削除する。

2  原判決三枚目表一行目に「翌日」とある次に「である昭和五六年七月二九日」を加え、同五行目に「本件訴状送達の日の翌日」とあるのを「不法行為に基づく損害賠償として前記昭和五六年七月二九日」と改める。

3  同四枚目表四行目及び五行目を削除する。

4  所有権取得原因の予備的主張

被控訴人は、昭和五六年七月七日原判決別紙第二物件目録記載(一)、(八)、(九)の物品を訴外マルク石油から買い受けた。

控訴人の前記4中段の主張は否認する。

5  控訴人の前記2の主張は争う。

(一) 従来の判例によれば、土地の定着物とは、土地の構成部分ではないが、土地に附着せしめられ、かつその土地に永続的に附着せしめられた状態において使用されることがその取引上の性質であるものをいう、と解されている。これによつて本件地下タンクをみるに、同タンクはまさに土地の定着物であり、土地の所有権とは別個に独立の所有権を留保できるものである。そして、本件地下タンクはいずれも設置時の土地賃借人が土地賃借権に基づいて設置したものであり、民法二四二条但書にいう権原によつて土地に附属せしめたものにあたり、土地とは独立の物として取り扱われる。

このように本件地下タンクが民法二四二条但書の適用をうけ土地とは独立の物であることは、これを設置した訴外マルク石油の土地賃借権が第三者に対抗できるものであれば、これを第三者に主張しうるものと解すべきところ、訴外マルク石油は、本件建物(一)、(二)について所有権取得登記を経ているので、第三者に土地賃借権を対抗することができ、したがつて本件地下タンクに関し上記主張をすることができる。

(二) 本件諸設備は本件建物の従物にあたる。従物が主物の経済的効用を補助するために役立つているかどうかの判断は客観的に、社会通念により決せられるべきである。これを本件についてみると、本件建物(一)は当初からガソリンスタンドを営業するためその目的に適合するように建てられた建物であり、その敷地は訴外マルク石油が同建物所有の目的で賃借したものである。そして、本件諸設備は、同訴外人がその一部を前所有者から買い受けたもの、その余は昭和四六年ころ本件建物(一)の敷地の賃借権に基づいて設置したものであつて、本件建物(一)を中心とするガソリン販売の給油所の附属施設であることが明らかである。

そして、本件建物(一)、(二)に設定されていた訴外中栄信用金庫の根抵当権の効力は本件諸設備にも及んでおり、このことは主物、従物の客観的、経済的結合が破壊されない限り第三者に対抗しうるところ、右結合状態は現在も何ら変わりはない。

控訴人が主張するように、昭和五二年九月二〇日本件諸設備の売買があつたとしても、右売買による所有権取得を訴外中栄信用金庫、したがつてまた、競落人である被控訴人に対抗することはできず、本件地下タンクについていえば、同タンクが土地の定着物であることに照らすと、何らかの明認方法を施すことを要するものと解すべきである。

6  控訴人の前記3の主張は争う。

被控訴人がいわゆる櫛田グループ各社と関係するようになつたのは、昭和五五年四月以降のことである。櫛田グループ各社の倒産後の整理は必ずしも順調でなかったところ、大口債権者の訴外中栄信用金庫を中心として債権者らが同グループ各社の承諾のもとに任意整理をする話が進み、被控訴人は不動産業者であるため、右任意整理の一環として、同月以降櫛田グループ各社の不動産を買い受けたにすぎない。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一本件建物(一)、(二)がもと訴外マルク石油の所有であつたが、原判決別紙登記目録記載のとおりの根抵当権が設定され、同目録記載二の根抵当権者訴外中栄信用金庫の申立てにより競売が開始され、被控訴人がこれを昭和五六年三月二日競落し、代金を支払つてその所有権を取得したことは、当事者間に争いがない。

二そこで、本件諸設備が本件建物(一)、(二)の附加物又は従物として、本件競落により被控訴人の所有に帰したか否かを検討する。

1  この点に関する事実関係の認定は、原判決五枚目裏二行目以下に掲げられた証拠に〈証拠〉を加え、同六枚目裏七行目に「キャノピン」とあるのを「キャノピー」と改め、同九行目に「右賃借地上」とある次に「又は地下」を、同九行目から一〇行目にかけて「(現況)」とある次に、「、形状」をそれぞれ加え、同一〇行目に「のとおりであり、」とあるのを「及び本判決別紙図面のとおりであり(原判決別紙第二物件目録記載(一)はコンクリート地表面にアンカーボルトで固定されており、同(八)、(九)は同地表面に固定され、本件地下タンクに接続されている。同(六)、(一〇)、(三)は地表面に固定されていない。同(二)は地下埋設されている。)、」と改めるほかは、原判決五枚目裏二行目から同七枚目裏三行目までと同一であるから、これをここに引用する。

2 右認定の事実によれば、その形状、設置状況等に照らし、本件地下タンクは、前記敷地の独立した定着物として不動産にあたり、これを除く本件諸設備はいずれも動産であるというべきであるが、これら本件地下タンクを含む本件諸設備は、右敷地の賃借権付の本件建物(一)(ガソリンスタンド店舗)を中心として、これと経済的に結合してガソリンスタンド営業に供せられており、社会観念上継続して本件建物(一)の効用を全うさせる役割を果たすものであることが明らかであり、本件建物(一)内の設備と本件判決別紙図面のとおりの構造で一部接続し、近接した場所的関係にあるから、すべて本件建物(一)の従物と認めるべきである。本件諸設備がなければ、ガソリンスタンドの営業が成り立たないとの点については、その逆のこともいえることはいうまでもなく、経済的価値の大小の点は、社会観念からみた客観的効用の主・従を判断基準とすべき主物・従物の区別を左右する決定的要素とはならないというべきである。また、前掲甲第七号証によれば、本件競売手続において、本件諸設備について評価がされていないことが認められるが、このことは鑑定評価の方法の当否の問題にすぎず、本件諸設備が本件競売の対象とされなかつたと解する根拠とはならない。

3  そうすると、前記第一項判示の根抵当権は本件諸設備に及ぶものであり、これらの主物である本件建物(一)を競落した被控訴人は、同時に本件諸設備の所有権をも取得したものというべきである。

三そこで進んで権利濫用の抗弁について判断する。

〈証拠〉に弁論の全趣旨を総合すれば、控訴人はマルク運輸株式会社の商号で、代表取締役に訴外櫛田が就任して営業活動をしていたところ、昭和五二年一二月一日現商号に変更し、訴外櫛田が代表取締役を辞任し、新たに同人の息子である櫛田潔史及び山田貞子が代表取締役となり、同時に同女の夫である山田秀臣も監査役に就任したこと、山田夫婦が控訴人の役員になり、経営に参加するようになつたのは、同人らが昭和五一年一一月以降控訴人に融資しており、かつ今後も融資を続けるということからであり、営業面は訴外櫛田が切りまわしていたこと、ところが、山田夫婦は、知らぬ間に昭和五四年六月三〇日代表取締役、監査役を退任した旨の登記がされていることを同年一一月ころ知り、その後、右退任及び控訴人の経営の実権をめぐつて訴外櫛田と山田夫婦との間に対立が生じたこと、本件競売は、請求原因1記載の根抵当権に基づくものであるところ、右根抵当権の設定者である訴外マルク石油(その代表者は訴外櫛田であつた。)は、昭和五一年四月二一日一回目の、同年一〇月二七日に二回目の不渡手形を出して倒産したこと、右根抵当権者である訴外中栄信用金庫は、訴外マルク石油倒産のころである昭和五一年一〇月二五日根抵当権設定契約を締結し、翌五二年一月二二日その旨の登記を経由し、本件競売申立てに及んだものであり、被控訴人もまた、右経緯を熟知しながら本件競落をしたものであること、被控訴人は、その代表者飯沼茂のいわゆる一人会社であるところ、同人は、本件競落によつて控訴人の本件建物(一)、(二)に対する賃借権(昭和五二年五月二七日訴外マルク石油から賃借したものである。)が被控訴人に対抗しえないものとなることを知つていたこと、被控訴人は右建物を取得して自己又は第三者の名義でガソリンスタンド営業を営む計画であつたこと、訴外中栄信用金庫が本件競売を実行するにあたつては、被控訴人もその相談にあずかつていること、訴外櫛田は、本件建物(一)、(二)の賃貸借に際し、山田夫婦に対し訴外マルク石油の旧債務については、同人において責任をもつて整理し、右各建物に対する抵当権も消滅させることを約していたこと、被控訴人代表者飯沼は、不動産業を営むかたわらいわゆる整理屋として倒産会社の私的整理を行う者であり、訴外須藤清とともに、訴外櫛田及びいわゆる櫛田グループ各社の倒産後の整理を、同各社の債務の保証人グループの依頼により費用及び報酬を得て行つてきたものであること、右整理の一環として、訴外櫛田において、山田貞子が所有権又は抵当権・賃借権の各登記名義を有する二棟の建物を、一棟は昭和五五年八月ころ、他の一棟は昭和五六年一月ころ取り壊し、訴外櫛田所有のその敷地を他に売却するなどしたこと、本件競落はかかる倒産後整理の一環として行われたものであり、被控訴人は、控訴人と訴外マルク石油との間の本件建物(一)、(二)をめぐる従前の経緯を承知していたこと、被控訴人は、右二棟の建物のうち、控訴人代表者所有名義の昭和五六年一月ころ取り壊された建物の敷地(更地)を訴外櫛田から買い受け、その旨の登記を経た上、同年四月二一日これを国に転売し、本件競落代金一九四〇万七〇〇〇円を下らない額の転売代金を得たこと、以上の各事実を認めることができる。

しかしながら、以上の認定を超えて、控訴人の主張するような、被控訴人がことさらに訴外中栄信用金庫に本件競売実行を敢行させ、かつ控訴人の競落を妨害したこと、あるいは本件競落が控訴人の賃借権を排除することを唯一の目的とするものであり、控訴人に対する関係では、訴外マルク石油によるものと評価すべき事実関係、被控訴人が前記二棟の建物の取壊しに関与した事実、本件競落代金が被控訴人が国から取得した転売代金のうち、控訴人代表者に支払うべき金銭から支弁されている事実については、本件全証拠によるもこれを認めるに足りない。

以上判示したような事実関係のもとでは、被控訴人の本件競落をもつて、未だ違法ということのできないことはもちろん、不当な権利行使と断ずることもできず、右競落によつて本件建物(一)、(二)及び本件諸設備の所有権を取得した被控訴人が控訴人に対しこれらの明渡し及び引渡しを求めることを目して権利の濫用にあたるとはたやすく認めがたいものというべきであり、そのほかにもこれを認めるに足りる証拠はない。

四次に、控訴人が本判決事実欄第二、一、4で主張する訴外山田貞子、同山田秀臣による本件諸設備買受けの主張の当否を検討する。

当裁判所は右主張を失当と判断するものであるが、この点に関する認定・判断は、原判決八枚目表三行目に「被告らが」とあるのを「訴外山田貞子、同山田秀臣が」と改め、同五行目に「記載があり、」とある次に「原審及び当審」を、同八行目に「記載は、」とある次に「当時訴外マルク石油の代表者であつた」を、同九行目及び同枚目裏末行に各「認められるが、」、同九枚目表七行目に「部分は、」とある次にいずれも「前掲甲第三七号証、同第五七号証、同第一〇七号証の一、二、乙第一一号証の一、二、同第六七号証及び」を、同九枚目表六行目に「さらに、」とある次に「前掲甲第六九ないし第七一号証、原審及び当審」をそれぞれ加えるほかは、原判決八枚目表三行目から同九枚目表九行目までに説示されているところと同一であるから、これをここに引用する。

五控訴人が昭和五二年五月二七日以降現在に至るまで本件建物(一)、(二)及び本件諸設備を占有していることは、当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、右建物の右同日当時の賃料は一か月金一〇万円であることが認められるから、昭和五六年七月二九日以後の右建物の賃料相当損害金は、一か月金一〇万円を下らないものと推認される。

六以上説示したところによれば、所有権に基づき本件建物(一)、(二)の明渡し及び本件諸設備の引渡しを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として昭和五六年七月二九日から右明渡しずみまで一か月金一〇万円の割合による賃料相当損害金の支払を求める被控訴人の本訴請求は、すべて正当としてこれを認容すべきである。

七そうすると、右と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、なお、当審において請求の減縮があり、原判決の一部が失効したので、その旨を明らかにし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官櫻井敏雄 裁判官増井和男 裁判官河本誠之)

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